アジア経済情報誌The Daily NNAインド版 インタビュー掲載

太陽光パネルの寿命100年に日系アルファ、印から革新起こす

「太陽光パネルの寿命は 20~30 年」――そんな常識を覆す製品の開発に、日本の企業が成功した。新興企業のアルファゼロス(本部・東京都港区)は、特殊フィルムを使うことでセルの劣化を防ぎ、100 年を超える長寿命が見込める太陽光パネルを製品化。世界第3位の太陽光発電市場であるインドでの導入に向けて、ソフトバンクグループ関連会社と協議を進めている。【天野友紀子】

国際エネルギー機関・太陽光発電システム研究協力プログラム(IEA PVPS)のリポートによると、インドでは昨年、9.1 ギガワット(GW、1GW= 100 万キロワット)の太陽光発電システムが導入された。国別の年間導入量は日本(7.5 GW)を抜き、中国(53.1 GW)と米国(10.7 GW)に次ぐ3位の規模に拡大した。 「インドの日射量は日本の2倍近くあり、インド政府は『太陽光はインドのためにあるエネルギー源だ』とまで言っている。電気事情の悪さといった国が抱える問題や電気自動車(EV)の普及政策を鑑みても、インドの太陽光発電市場の発展は疑いの余地がない。どこよりもまずインドに製品を入れて、革新技術を一気に広めたい」――アルファゼロスの仲濱秀斉会長は、そう力を込める。

NEDOで劣化の仕組みを解明

アルファゼロスは太陽光発電設備の架台の製造・販売を手掛けるアルファブロス(大阪市)を母体として、今年7月に設立された。仲濱氏は三井化学で防水材料の開発を手掛け、日清紡ホールディングス在籍時の 2012 年から 17 年にかけては新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の太陽電池関連技術・材料の開発プロジェクトを率いた経歴を持つ。NEDOの研究で太陽電池の劣化メガニズムを解明した仲濱氏は、在籍していた日清紡などで発電劣化防止技術の製品化を試みた。だが、技術が未完成であった点や「採算が見込めない」という理由から同意を得られず、独立することに。中国の太陽光発電業界にコネクションを持つアルファブロスと新会社を立ち上げ、製品化を目指すに至った。 太陽電池の劣化は、セルを守るためにかぶせているガラスから溶出するナトリウムによって生じる。ならばナトリウムの侵入を防ぐ透明なフィルムをセルとガラスの間に入れればいい――そういう発想で研究を進め、特殊オレフィンを使ったフィルムを開発した。フィルムは日本の化学繊維メーカーに生産を委託、フィルムを差し込んだ太陽光パネルは中国メーカーで組み立てる。「年初から中国の大手各社を行脚し、生産委託交渉を行った。『フィルムだけ売ってほしい』という要請もあったが、最終的に中国国営のCECEP(中国節能環保集団)がパネルの量産を引き受けてくれることになった」

8割の発電効率を 100 年以上維持

 製品は今年6月に特許を出願し、11 月にドイツの製品安全認証機関テュフラインランド(TUV)の認証を得て販売に向けた土台を作った。アルファゼロスはTUVに依頼して、中国の太陽光パネル大手4社と自社のパネルの寿命(長期信頼性)を比較するための実験データも 取得した。  太陽光パネルは一般的に、劣化率 20%以下で 80%の発電効率を保てる期間を「製品保証期間」としている。アルファゼロスはTUVの実験で示されたFF(曲線因子)やIsc(短絡電流)といった値を基に寿命を予測。比較対象の大手4社の製品のうち信頼性が最も高く、30 年の製品保証を行っているパネルを基準にすると、「アルファゼロスのパネルは 350 年にわたり8割以上の発電効率を保てる」という結果が出た。製品の採用実績がないため、同社はこういった試験・比較データを充実させ、稼働期間の長さをアピールすることで、大手事業者の説得を試みている。

パネル廃棄を最小限に

 アルファゼロスが自社製品の拡販を急ぐ背景には、将来的に懸念されるパネル廃棄の問題がある。「環境に優しい」とされ普及が進む太陽光発電だが、パネルのセルの接合には人体や環境に有害な鉛が使われている。寿命を迎えたパネルは埋め立てで処理されるのが現状で、仲濱氏は「20~30 年後には廃棄場所や廃棄コストが必ず問題化する」と指摘。「当社のパネルを使ってメンテナンスを加えながら運用することで、100 年以上稼働できる太陽光発電所を増やしたい」と語る。 パネルの廃棄に関しては日本の経済産業省資源エネルギー庁も「寿命を 20~25 年と想定した場合、太陽電池モジュールの廃棄量は 2040 年前後に(日本だけで)年間 80 万トンに達する」との予測を含めたリポートを出し、問題提起。不法投棄や有害物質の流失を防ぐための制度の構築を進めている。 インドではソフトバンクグループの関連会社、日本ではNTTグループ関連会社とそれぞれ契約に向けた交渉や製品評価を進めている。中国の太陽光パネル大手に向けてフィルムのみを供給する案件も同時進行中だ。 仲濱氏は「一定量受注できれば、他社の製品と同等のコストで販売できる。世界規模で太陽光発電事業を展開する大手と契約し、本当の意味で環境に優しい太陽光発電の普及を最短距離で実現したい」と意気込む。


<メモ>
インド政府は 2022 年までに、太陽光による総発電容量を 100 GWに引き上げる目標を掲げている。PTI通信などによると、インドは今年上半期(1~6月)に 4.9 GWの太陽光発電システムを新たに導入し、総発電容量は6月末時点で 24.6 GWとなった。目標達成に向けて 22 年までにさらに 75.4 GWの導入を進める計算になる。今年上半期の国別の太陽光発電導入量でインドは米国を上回り、世界2位となった。総発電容量では6月末時点で世界5位となっている。